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2020年 8月 3日更新

新型コロナウイルス救済策(その④)

先月までは主に一時給付金に関連する情報を紹介させて頂きましたが、今月は節税効果が得られる法人所得税の緩和措置について紹介をさせて頂きます。

① 繰越欠損金の繰り戻し

2017年末に導入された税制改革により繰越欠損金の利用に制限が設けられましたが、今回の救済措置でそれらの制限が一時的に停止され、さらに損金に対する取り扱いが緩和されました。当該年度において営業利益が純損失となった場合、後年利益を出した年度に対して相殺する事が認められています。ただし相殺が可能な課税年度の範囲と上限額が制限されていました。

【救済措置前の取扱い】
  • 2017年12月31日以降に発生する繰越欠損金に対し、相殺可能額が当該年度課税所得額の上限80%に制限
  • 未使用の繰越欠損金は全額消化するまで永久に繰り延べする事が可能になったが、税制改革前まで認められていた繰り戻しが廃止された
【救済措置後の取扱い】
  • 相殺可能額上限80%の制限が2020年度申告まで一時的に停止され、当該年度課税所得額に対して100%相殺が可能となった(80%上限ルールは2021年度から再適用予定)
  • 申告年度2018年、2019年および2020年に発生した欠損金が、各発生年度から数えて5年前に遡って相殺する事が可能となった

例えば、2018年と2019年の課税所得がそれぞれ ▲$800,000 の純損失と $500,000 の純利益だったと仮定します。救済措置前と救済措置後では繰越欠損金に対する取り扱いが次のとおり大きく異なります。

【救済措置前】
  • 2018年度に発生した純損失 ▲$800,000 は繰り戻して利用できない
  • 2018年度に発生した純損失 ▲$800,000 は全額消化するまで永久に繰り延べできる
  • 2019年度の純利益 $500,000 に対して相殺可能額は $400,000 ($500,000 x 80%) の為、残りの$100,000 に対して$21,000 ($100,000 x 21%) の税金が発生する
【救済措置後】
  • 2018年度に発生した純損失 ▲$800,000 は、過去5年遡って繰り戻して利用できる
  • 2018年度に発生した純損失 ▲$800,000 は全額消化するまで永久に繰り延べできる
  • 2019年度の純利益 $500,000 に対して相殺可能額は $500,000 ($500,000 x 100%) の為、税金は発生しない

更に欠損金が発生した年度から5年遡って欠損金を繰り戻しする事が可能なため、2013年から2017年の間に税金を納めた実績がある場合には、該当する年度の課税所得に対して2018年度の純損失 ▲$800,000 を相殺する事が出来るようになりました。

例えば、2013年の課税所得 $500,000 に対して $170,000 の税金を納付していた場合、2018年度に発生した純損失を2013年まで遡って相殺する事で課税所得額をゼロにする事ができ、結果的に当時納付した税金 $170,000 を全額還付請求する事が出来ます。また未使用の損金額 $300,000 ($800,000 - $500,000) は、2014年から2017年何れの年度の課税所得と相殺する事が出来ますので、繰り戻し相殺が可能な年度の税金に対して還付請求する事が出来ます。

② 利子控除額の損金上限拡大

支払利子の控除額は、上限が調整課税所得の 30% に制限されていますが、2019年度と2020年度申告に限り上限が 50% まで拡大されました。その為、業務上支払利子が多い法人は両年度に節税効果を得られる事が期待されます。

③ 寄付控除額の損金上限拡大

寄付金の控除額は、上限が課税所得の 10% に制限されていますが、2020年度申告に限り上限が 25% まで拡大されました。その為、2020年度に寄付された支援金などは例年に比べ多く控除する事が出来ます。ただし、控除として認められるためにはIRSに認定された団体などに寄付する必要がありますので、注意が必要です。

今回のコラムニスト
SCS Global Professionals, LLP

2020年 8月 3日更新

上記は記事更新日時点の情報をもとに執筆されています。
最新情報は異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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